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AIは仕事のやりがいを奪うのか? 「使い方」で変わる心理的影響

2026/03/31
目次

AIの普及による様々な影響

近年、職場でAIを使う場面は確実に増えています。国内の調査(労働政策研究・研修機構,2025)でも、AI を使う職場では「2年前より AI 利用が拡大した」と回答した人が半数を超えました。

生成AIを使えば、メール文案やプレゼン資料、会議メモの要約、企画のたたき台などを短時間で作ることができるようになりました。仕事のスピードが上がり、負担が軽くなったと感じる人も多いでしょう。

実際、AIの活用が生産性やパフォーマンスの向上につながることは、研究でも示されています。たとえば、カスタマーサポート業務を対象とした研究では、生成AI支援ツールの利用によって生産性が向上し、とくに経験の浅い担当者で大きな改善が見られました(Brynjolfsson et al., 2023)。また、コンサルティング業務でも、AIが得意とする課題では、生成AIを用いた群の方が、より多くの課題をより速くこなし、成果物の質も高くなりました(Dell’Acqua et al., 2023)。

国内の調査(労働政策研究・研修機構,2025)でも、職場でのAI利用者に利用前後の変化を尋ねたところ、仕事のパフォーマンスだけでなく、メンタルヘルスやウェルビーイングなどについても、「悪化した」より「改善した」と回答した人の割合が上回っていました。また、働き方等の変化についても、月間の総残業時間は減少傾向にある一方で、有給休暇の取得日数や職場でのコミュニケーション機会などは増加傾向にある回答結果となり、職場のAI利用が様々な面から仕事の質を改善する可能性が示唆されています。

このように、AIは多くの職場で「役に立つ道具」として広がっています。一方で、その便利さの陰に隠れた副作用も耳にすることがあります。たとえば、AIが出した答えをそのまま使う場面が増え、「自分で考えて仕事をした」という感覚が薄れることはないでしょうか。タスクを早くこなしても、どこか手応えが乏しい。そんな感覚を持つ人もいるかもしれません。

近年、AIと働く人との関係をめぐっては、「仕事が奪われるか」という議論だけでなく、AIの利用が働く人の心理面にどのような影響を与えるのかにも注目が集まっています。

そこで本稿では、AIが働く人の心理や仕事の意味にどのような影響を与えるのかについて、近年の研究知見を手がかりに考えてみたいと思います。

重要なのはAIを「どう使うか」

最近の研究では、AIの利用そのものよりも、どのように利用するかによって、働く人への心理的影響が変わりうることが示されています。

知識労働者を対象とした研究では、従業員がAIと協働していると感じるほど、仕事の意味を感じたり、「新しい工夫を生み出せる」という自信が高まったりしやすく、それらを通じてワーク・エンゲイジメントが高まりることが示されています(Sun et al., 2026)。

ここでいう「AIとの協働」とは、単にAIを道具として使うことではなく、仕事の過程で人とAIがやり取りしながら進める使い方を指します。

Jarrahi(2018)は、AIとの協働を「AIに任せること」ではなく、AIが得意なことと、人が得意なことを分けながら一緒に仕事を進めることとして捉えています。そして、AIは大量の情報を高速に処理し、複雑な問題を分析することに強い一方で、不確実な状況での判断や、複数の立場を踏まえた意味づけ・合意形成のような場面では、人の直観や経験、全体を見通す力が重要だと論じています。つまり、AIが分析を支え、人が方向づけや最終判断を担うような補完的な協働が重要だということです。

一方で、AIの受動的・依存的な使い方は注意が必要です。たとえば、AIが作った文章をそのまま使うような使い方は、自己効力感や心理的所有感(「これは自分の仕事だ」「自分が関わってつくったものだ」と感じられる感覚)、仕事の意味を弱めうることが報告されています。逆に、人が先に下書きを作り、その後AIで改善する使い方は、こうした心理的なつながりを保ちやすいことが示されています(Lee et al., 2026)。

別の研究でも、生成AIの利用は目の前の成果を高める一方で、その後に一人で取り組む課題では、内発的動機づけが下がり、退屈感が高まる可能性が報告されています(Wu et al., 2025)。

つまり、効率化そのものが問題ではなく、人が考える工程まで AI に明け渡してしまうと、仕事の手応えが薄くなりやすいことが問題と捉えられます。

たとえば、文章を書く仕事で、自分では構成も考えず、AIが出した文面をほぼそのまま提出する場面を想像してみてください。

そのとき、成果物は完成していても、「自分の力でやり遂げた」という感覚は残りにくいでしょう。さらに、その仕事に対する愛着や誇りも持ちにくくなるかもしれません。

こうした状態が積み重なると、仕事はただ「こなすもの」になり、「自分が意味を感じながら取り組むもの」ではなくなっていくおそれがあります。

効率化が進むほど、かえって仕事との心理的なつながりが弱くなるという逆説が生まれうるのです。

以上から、人が考え、判断し、方向づけを行う余地を残したままAIを活用すること、つまり人の主体性を損なわない使い方をすることが、心理面でも行動面でも重要であると考えられます。

人事や職場が考えたいこと

職場でのAI導入・活用は、今後ますます拡大していくことでしょう。

上記の内容は、個人の工夫だけでなく、職場の設計にも関わります。

人とAIが協働する仕事の複雑さが増すと、AIを学びながら使うことへの不安が高まり、ワーク・エンゲイジメントの低下につながる可能性があること、その悪影響は、AIを使いこなせるという感覚や、学びを支えるリーダーシップによって和らぐ可能性があることが報告されています(Wang et al., 2026)。

また、別の研究では、AIとの協働が仕事量の軽減を通じて、従業員の主体的な行動を後押ししうることも示されています(Sun et al., 2025)。

さらに、国内の調査(労働政策研究・研修機構,2025)でも、AI 導入の効果は、職場での話し合い、学び直し、企業による訓練や支援がある場合に高まりやすいことが示唆されています。

したがって、人事や管理職には、効率性のみを重視して単純にAIの利用を促すのではなく、どのような目的でどのように活用するのかという視点が求められるといえます。

たとえば、最初の発想や論点整理、最終判断は人が担い、AI は情報整理やたたき台づくり、改善案の提示等で補助的に使う。あわせて、AI を学ぶ時間や相談の場を確保し、評価も「速く、多く出したか」だけでなく、「どう考え、どう確かめたか」まで見る。そうした運用の方が、効率と主体性を両立しやすいと考えられます。

AIは、使い方次第で働く人を支える存在にもなれば、仕事の手応えを薄れさせる存在にもなりえます。何をAIに任せ、何を人に残すのかを丁寧に考えることが必要といえます。

おわりに

AIは仕事を効率化してくれる便利な道具です。しかし、働く人にとって大切なのは、早く終わることだけではありません。自分で考えた、工夫した、役に立てたと感じられることも、仕事を続ける上で重要な要素です。

AI時代の職場づくりで問われるのは、生産性と同時に、働く人が仕事の意味や主体性を保てるかどうかです。

AIに任せることの価値と、人が担い続けることの意味の両方を見失わないことが、これからの職場にはますます重要になるのではないでしょうか。

引用文献

Brynjolfsson, E., Li, D., & Raymond, L. R. (2023). Generative AI at Work. NBER Working Paper No. 31161.
https://doi.org/10.3386/w31161

Dell’Acqua, F., McFowland III, E., Mollick, E., Lifshitz-Assaf, H., Kellogg, K. C., Rajendran, S., Krayer, L., Candelon, F., & Lakhani, K. R. (2023). Navigating the Jagged Technological Frontier: Field Experimental Evidence of the Effects of AI on Knowledge Worker Productivity and Quality. Harvard Business School Technology & Operations Mgt. Unit Working Paper No. 24-013.
https://doi.org/10.2139/ssrn.4573321

Jarrahi, M. H. (2018). Artificial intelligence and the future of work: Human-AI symbiosis in organizational decision making. Business Horizons, 61(4), 577-586.
https://doi.org/10.1016/j.bushor.2018.03.007

Lee, E. H., Yin, Y., Jia, N., & Wakslak, C. J. (2026). Relying on AI at work reduces self-efficacy, ownership, and meaning while active collaboration mitigates the effects. Scientific Reports.
https://doi.org/10.1038/s41598-026-42312-6

Sun, C., Zhao, X., Guo, B., & Chen, N. (2025). Will Employee–AI Collaboration Enhance Employees’ Proactive Behavior? A Study Based on the Conservation of Resources Theory. Behavioral Sciences15(5), 648.
https://doi.org/10.3390/bs15050648

Sun, L., Hu, R., & Su, H. (2026). Unlocking human potential in the AI Age: how employee-AI collaboration transforms work engagement through dual psychological pathways. Frontiers in Psychology, 16, 1705671.
https://doi.org/10.3389/fpsyg.2025.1705671

独立行政法人労働政策研究・研修機構 (2025) AIの職場導入による働き方への影響等に関する調査(労働者Webアンケート)結果
https://www.jil.go.jp/institute/research/2025/256.html

Wang, B., Liu, S., & Luo, C. (2026). How does human-AI collaboration task complexity affect employee work engagement? The roles of humble leadership and AI self-efficacy. Frontiers in Psychology, 17, 1767967.
https://doi.org/10.3389/fpsyg.2026.1767967

Wu, S., Liu, Y., Ruan, M., Chen, S. & Xie, X.-Y. (2025). Human-generative AI collaboration enhances task performance but undermines humans’ intrinsic motivation. Scientific Reports, 15, 15105.
https://doi.org/10.1038/s41598-025-98385-2

#ウェルビーイング#ワーク・エンゲイジメント#仕事のやりがい#AI
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