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キーワードは「時間稼ぎ」〜正しく怒るためのアンガーマネジメントのコツ〜

2026/09/01
目次

数年前からアンガーマネジメントの講座を依頼されることが増え,

受講希望の方も結構いらっしゃったので,世間の関心があることはわかっていました。

改めてアンガーマネジメントが幅広い世代に認知され,

日本語として浸透しているということがわかりました。

論文や専門書,研修会などで学ぶことは多かったのですが,

一般的にはどのような形で理解されているのだろうかと調べてみました。

その上で今回は,怒りとの付き合い方が上手くなるための

いくつかのコツを私なりにお伝えしようと思います。

まず1つめは,「時間稼ぎ」です。

アンガーマネジメントの最初の対応は,台風から身を守る時とよく似ています。

台風が来て,すごく強い風が吹いているとき,みなさんどうするでしょう?

自宅や頑丈な建物の中に避難しますよね。

単身で吹き荒ぶ嵐に立ち向かっていくのはとても危険です。

すでに屋外に出してしまっていることが難しいものは台風が去った後に確認しますね。

たとえ台風に備えた対策を十分にしておらず,外の状況が気になったとしても,

外に出て確認するのは絶対に避けるべき行動で,少なくとも数時間は自分の安全を確保しておきます。

(画像はイメージです)

怒ったときも同様です。ピークが過ぎるまで,比較的安心できる場所で頭を冷やたあとに行動します。

ただ,怒りのピークは台風よりもずっと早く過ぎます

ピークを過ぎると,理性的に怒りを表現することができるようになります。

続いて2つ目のコツです。

それは,「怒っている」ことを言葉にすることです。

時間稼ぎをすると,怒りはピークは過ぎるのですが,なくなりません。

当たり前の話ですが,怒るきっかけがあって,怒っているわけです。

きっかけが解決していないのに,怒りが短時間で全て消えるわけはありません。

アンガーマネジメントとは,

「怒りに任せて行動せず,怒りを適切に表現する」ことです。

怒りをなくすことが目的ではありません。

自分が怒っていることをまずは認め,場面に合わせて自分の行動を調整していくことが

社会に生きていく上では非常に大切なことです。

(画像はイメージです)

むしろ,無くそうとすると,余計に「怒っている」ことを意識してしまいます。

怒りに限った話ではなく,不快な感情は無視しようとすればするほどうまくいきません。

感情制御研究の祖とも言えるGross & Levenson (1993)やGross(1998)では,

感情の表出を抑えようとするほど心拍数や血圧反応が増大することが示されています。

また人間は,自分に生じる感情を無視することが苦手で,無視しようとすればするほど注意を向けてしまう傾向があります(Wegner et al., 1997など)。

台風も過ぎ去りはしますが,「なかったこと」にはなりません。

怒りもなくなりません。「なかったこと」にしようとせず,あくまで巻き込まれないための時間稼ぎをして,

落ち着いた後に行動することが大切です。

なぜ,「やりすごす」ような方法を使わなければいけないのでしょうか?

それは感情が,古代から人間の祖先の時代から我々に受け継がれている仕組みだからです。

とくに怒りは「攻撃から身を守る」ための感情なので,攻撃モードに切り替えます。

自分を防衛するために相手を遠ざけようと行動します。

そうなっている時に,冷静になろうと怒りを抑えたり,相手に近づこうとするのは危険です。

理性や我慢でどうにかするのは非常に難しいのです。

少し,専門的な心理療法の話をします。

感情のコントロール方法を系統的に学ぶ心理療法であるSTEPPS(Blums et al., 2002)では,

激しく感情的になった時に,以下の4つを順番通り実施して対処します。

1.距離をとる(6秒にこだわらない)

2.(怒っていることを)言葉にすること

3.注意を逸らす

4.対処する

このプロセスを見てもわかるように,直ちに対処する訳ではなく,

「嵐に巻き込まれないように」自分の身を離したところに置き,落ち着いてから対処へと移ることがわかると思います。

「時間を稼ぐ,言葉にする」この練習を繰り返していきます。

至って単純な方法ですが,反復すればするほど確実に上手くなります。

よくクライエントさんにお伝えする表現があります。

感情表現や行動の調整は「歩き方や鉛筆の持ち方を矯正するようなこと」だということです。

変えられないものではないが,今日明日で劇的に変わるものではない。

正しい方法とコツを知って,地道に繰り返していくことで少しずつ変わり,変わった時には快適になっているものです。

この記事がみなさんにとって有効な「コツ」の1つとなれば幸いです。

(主任研究員 山田圭介)

引用

Blum, N., Pfohl, B., St. John, D., Monahan, P., & Black, D. W. (2002). STEPPS: A cognitive-behavioral systems-based group treatment for outpatients with borderline personality disorder—A preliminary report. Comprehensive Psychiatry, 43(4), 301–310.

Gross, J. J., & Levenson, R. W. (1993). Emotional suppression: Physiology, self-report, and expressive behavior. Journal of Personality and Social Psychology, 64(6), 970–986.

Gross, J. J. (1998). The emerging field of emotion regulation: An integrative review. Review of General Psychology, 2(3), 271–299.

Wegner, D. M., Broome, A., & Blumberg, S. J. (1997). Ironic effects of trying to relax under stress. Behaviour Research and Therapy, 35(1), 11–21.

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