・心理学から考えるAI面接① 応募者は、AI面接をどう受け止めているのか
同じ応募者を面接しても、面接官によって評価が分かれることがあります。
ある人は話し方に注目し、別の人は経験の豊富さを評価する。さらに、応募者ごとに聞く内容が大きく違えば、比較の材料も揃いません。
AI面接では、質問や評価の一部を自動化できます。
その際に考えたいのが、何を尋ね、回答のどこを見て、どのように判断するかです。
この設計には、人による面接で蓄積されてきた構造化面接の研究が手がかりになります。
前回は、応募者が面接の方式や評価主体をどう受け止めるかを取り上げました。
今回は、面接が評価方法としてどのような条件を備える必要があるかを考えます。
構造化は質問と評価の両方に関わる
構造化面接とは、尋ねる内容や進め方、回答の評価方法について、あらかじめルールを定めた面接です。
Campionらが1997年に発表したレビューでは、構造化を、面接内容と評価過程に関わる15の要素から整理しています。
決められた質問を順番に読むことだけが構造化ではありません。
たとえば、採用する仕事に必要な行動をもとに質問を作る、応募者に共通する質問を用意する、回答を記録する、評価の観点や採点基準を定めるといった工夫が含まれます。
質問から判断までを揃えることで、応募者を比較するための土台を作ります。
全員に同じ質問をしても、面接官ごとに採点基準が違えば、評価は揃いません。反対に、評価項目だけを揃えても、必要な情報を聞き出せていなければ、印象で点数を付ける余地が残ります。
質問と評価の設計は、つなげて考える必要があります。
Levashinaらの2014年のレビューでも、構造化の定義に加え、質問形式、評価尺度、追質問、応募者の反応などが検討されています。
構造化には複数の要素があり、どの要素をどの程度取り入れた面接かまで見ることが必要です。
質問は仕事で求める行動から考える
面接で評価したい言葉として、主体性、協調性、問題解決力などが使われます。
しかし、その言葉だけでは、どのような回答を高く評価するのかが定まりません。
主体性一つをとっても、自分から提案することと、問題に気づいて関係者へ働きかけることでは、確認する内容が異なります。
そこで、仕事の内容や、成果を上げるために必要な行動を調べ、それに沿って質問を作ります。
構造化面接の研究では、この職務分析とのつながりが重視されてきました。
国内でも、竹田が2004年に報告した新卒採用の研究では、社員と部門責任者へのインタビューから仕事に必要な人物面を整理し、評価尺度と質問を設計しています。
面接のルールは、採用する仕事を理解するところから組み立てられていました。
質問形式にも選択肢があります。過去の具体的な行動を尋ねる方法と、ある状況に置かれたらどう対応するかを尋ねる方法です。
前者では本人が実際に何をしたかを確認し、後者では判断や対応の考え方を確認します。
いずれも、回答から何を評価するのかを先に決めておくことが出発点になります。
新卒採用では、応募者に職務経験がないことも前提になります。
仕事と同じ経験を求めるか、学業や活動の中で示された行動から捉えるかによって、質問の作り方は変わります。
経験の有無と、評価したい能力を混同しない設計が必要です。

回答のどこを評価するかまで定める
質問を作ったあとは、回答の評価方法を考えます。問題解決の経験を尋ねたとしても、成果の大きさ、本人の行動、課題を分析する過程のどれを重視するかによって、点数は変わります。
たとえば、課題を捉えて周囲と調整する力を確認するなら、問題をどう把握したか、本人が何を担ったか、関係者にどのように働きかけたかを聞きます。
そのうえで、どの行動がどの評価に当たるかを、具体的な記述で共有します。これは評価設計の一例であり、実際の基準は仕事に合わせて検討するものです。
話が流暢だったという印象だけでは、求める行動が確認できたかはわかりません。
回答のどの部分を根拠に点数を付けたのかを残しておくと、評価の違いを検討できます。複数の面接官が同じ回答を採点し、食い違う箇所を確認することも、基準を共有する方法になります。
追質問についても、回答が曖昧なときに何を確かめるかを決めておく必要があります。
詳しく話す機会が一部の応募者だけに偏れば、比較の条件が変わります。
本人の役割や行動が不明な場合に追加で尋ねるなど、情報の不足を補うためのルールとして考えられます。
一貫した評価と仕事ぶりの予測を分けて確かめる
面接の質を確かめるときには、信頼性と妥当性という二つの観点があります。
評価者が変わっても同じ回答への評価が揃うかは、信頼性の一側面です。
面接で得た評価が、その後の仕事ぶりなど、確かめたい対象と関係するかは、妥当性に関わります。
Sackettらは2022年、採用に使われるさまざまな方法について、仕事ぶりとの関連を統合した過去のメタ分析を再検討しました。
統計的な補正によって予測力が過大に見積もられていた点を見直しても、構造化面接は、比較された方法の中で平均的な予測力が最も高い位置にありました。
この結果は構造化面接を支持するものですが、同じ名称の面接がどこでも同じ精度を持つという意味ではありません。
Sackettらは2023年の論文で、構造化面接の補正後の平均相関が0.42である一方、研究間のばらつきも大きいことを指摘しています。
この値は複数研究を統合した関連の強さであり、採用判断が42%の確率で当たるという意味でもありません。
国内の竹田の研究でも、面接時の評価と入社後のOJT評価との関連は、評価する側面によって一様ではありませんでした。
面接で何を捉え、入社後のどの時点の何と照合するかまで決めることで、評価方法を点検できます。

AIによる評価でも確かめるべきことがある
ここまでの構造化面接の知見は、主に人が面接し、評価する研究から得られたものです。
AI面接への適用を考える際には、質問の設計に加え、AIが回答をどのように採点するかも検証対象になります。
Hickmanらが2025年に発表した研究では、模擬の録画型面接から認知能力を推定する機械学習モデルを検討しました。
二つのサンプルを用い、質問間や時点間での信頼性、他の測定値との関連、偏りなどを調べています。
妥当性を支持する結果が得られた側面がある一方、測りたい概念を別の概念と区別して捉えられるかについては、限られた証拠にとどまるモデルもありました。
この研究が示すのは、AIの採点を、人や検査の点数とどれだけ一致するかだけで評価しきれないことです。
安定して採点できるか、何を測っているか、他の集団や場面にも適用できるかを、併せて確かめる必要があります。
特定の能力を推定する研究の結果を、面接で扱うすべての評価項目に広げることもできません。
自動化によって同じ処理を繰り返せても、その基準が仕事と関係するかは別に問われます。
人の評価を再現する場合も、再現対象となる判断が何を根拠にしているかを点検する必要があります。
構造化面接の研究を参照して設計することと、そのAI評価の妥当性が確かめられることには、それぞれの作業があります。
面接の設計を検証につなげる
面接の質を考える際には、まず、採用する仕事で必要な行動を整理し、それを確認する質問と、回答を判断する基準をつなげることが必要です。
さらに、運用後の記録から評価の一貫性や仕事ぶりとの関連を確かめ、設計を見直していくことになります。
その過程では、応募者が自分の力を示せたと感じるかも併せて捉えたいところです。
採用側が比較しやすい面接と、応募者が十分に伝えられたと感じる面接を、両方の側から点検する必要があります。
構造化面接の研究は、質問から評価、入社後の検証までをつなげて考えるための蓄積です。
AI面接においても、何を自動化できるかとともに、どのような情報を集め、何のために評価するのかを具体的にすることが、面接を設計する出発点になります。
次回は、応募者側の体験に戻り、AIが相手なら緊張せずに話せるのかを、面接不安の研究から考えます。
(組織心理研究所 主任研究員 丹野宏昭)
文献
Campion, M. A., Palmer, D. K., & Campion, J. E. (1997). A review of structure in the selection interview. Personnel Psychology, 50(3), 655–702. https://doi.org/10.1111/j.1744-6570.1997.tb00709.x
Levashina, J., Hartwell, C. J., Morgeson, F. P., & Campion, M. A. (2014). The structured employment interview: Narrative and quantitative review of the research literature. Personnel Psychology, 67(1), 241–293. https://doi.org/10.1111/peps.12052
竹田知子 2004.日本企業における採用面接構造化の研究.心理学研究,75巻4号,339–346.https://doi.org/10.4992/jjpsy.75.339
Sackett, P. R., Zhang, C., Berry, C. M., & Lievens, F. (2022). Revisiting meta-analytic estimates of validity in personnel selection: Addressing systematic overcorrection for restriction of range. Journal of Applied Psychology, 107(11), 2040–2068. https://doi.org/10.1037/apl0000994
Sackett, P. R., Zhang, C., Berry, C. M., & Lievens, F. (2023). Revisiting the design of selection systems in light of new findings regarding the validity of widely used predictors. Industrial and Organizational Psychology, 16(3), 283–300. https://doi.org/10.1017/iop.2023.24
Hickman, L., Tay, L., & Woo, S. E. (2025). Are automated video interviews smart enough? Behavioral modes, reliability, validity, and bias of machine learning cognitive ability assessments. Journal of Applied Psychology, 110(3), 314–335. https://doi.org/10.1037/apl0001236




