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【セミナーレポート】従業員エンゲージメント向上!会社による効果的なキャリア自律支援を学ぶ

2024/07/23
目次

当研究所は、「従業員エンゲージメント向上!会社による効果的なキャリア自律支援を学ぶ」というテーマで、2024年6月に株式会社リーディングマークのセミナーに登壇しました。

近年よく取り上げられている「キャリア自律」とは、どのような状態で、どのような効果が見込まれるのでしょうか。

今回は、従業員ひとりひとりが主体的、自律的に自身のキャリア形成に取り組むことのメリットと、それを会社が支援する必要性について、セミナーの内容をもとに紹介いたします。

キャリア自律とは

改めて、キャリア自律とは何でしょうか。

  • 「変化する環境において、自らキャリア構築と継続的学習に積極的に取り組むこと」
    (米国キャリア・アクション・センターによる定義)
  • 「めまぐるしく変化する環境のなかで、自らのキャリア構築と継続的学習に取り組む、(個人の)生涯に渡るコミットメント」
    (花田・宮地・大木(2003)による定義)

など定義はいくつかありますが、それらをまとめると「働く人ひとりひとりが、自身のキャリアについて主体的に考え、責任をもって自律的にキャリア形成に取り組んでいる状態」ということができます。

日本で「キャリア自律」が重視されるようになったのは、1990年代後半以降です。

日本では長年、年功序列の終身雇用システムが主流であり、働く人は新卒で入社した会社に勤め続ける中でキャリアを形成していくという意識が、会社側・従業員側ともに強かったところです。そのため、会社主体のキャリア開発・人材開発が主に行われてきました。

しかし、バブル崩壊以降の雇用形態の変化や、労働人口の減少、情報技術の高度化など、社会の様々な変化を受け、働き方の多様化が進み、キャリアの形成においても会社主体から従業員主体へと転換してきました。

では、具体的にどういう要素がキャリア自律を構成していて、何をもってキャリア自律なのでしょうか。

研究では、キャリア自律には心理的側面と行動的側面があるとされています。

心理的側面は、

  • 職業的自己概念(イメージ)の明確さ:キャリアを形成していくうえで、自身の能力、興味・欲求、価値観について主観的に認識していること
  • 主体的キャリア形成意欲:キャリアに関心を持ち、主体的に充実したキャリアを築いていこうとする意識・姿勢のこと
  • キャリアの自己責任自覚:キャリアの形成は自身の責任であるとする意識・姿勢のこと
  • 職業的自己効力感:仕事や職場の課題・問題を対処しこなしていけるという自信のこと

行動的側面は、

  • 主体的仕事行動:自分の価値観や考えのもとに主体的に行動し、仕事に取り組むこと
  • キャリア開発行動:新しいスキルや知識の学習と開発に主体的、継続的に取り組むこと
  • 職場環境変化への適応行動:キャリア、職場、仕事など自分を取り巻く環境の変化に柔軟に対応すること
  • ネットワーキング行動:積極的に人的ネットワーキングを構築し維持しようとする行動のこと

それぞれ上記のように構成され、この2つをあわせてキャリア自律とし、心理的側面が行動的側面を促進するとされています。

キャリア自律を会社が支援する必要性と得られる効果

次に、キャリア自律により得られるメリットと、なぜ会社が支援するべきなのかという点について説明します。

キャリア自律は、個人のスキル・能力アップ、主観的なパフォーマンス向上といった個人の行動面から、仕事充実感やワーク・エンゲイジメントといった状態面まで、様々な面へのプラスの影響が示されており、会社と従業員双方にとって大きなメリットがあるといえます。

一方で、キャリア自律を支援すると、スキルアップした優秀な社員の離職につながるのではという懸念も多く聞かれるところです。

しかし、これまでの調査では、キャリア自律と離職との間に有意な関係はないことが分かっています。むしろ、キャリア自律によって組織へのコミットメントが高まることが転職意思を下げうることが示されています。

ただし、キャリア自律度が高く、他社で通用する自信がある人は離職意思が高いという結果も示されており、社内で個々人がやりたいことをやれる見通しがあることが、離職防止という点では重要になってきます。

では、キャリア自律はどのように促進されうるのでしょうか。

研究では、「転機経験(仕事上の大きな変化や経験)」、「仕事経験からの学び」といった経験や、「垂直的交換関係(上司との人間関係)」、「水平的交換関係(同僚や周囲との人間関係)」といった人間関係が要因として挙げられています。

これらの要因が図1のように関連し、キャリア自律を促しうることが示されています。

ここまでの内容をまとめると、図2のように表すことができます。

つまり、キャリア自律を促進するためには、従業員自身の取り組みと、会社による支援の両方が必要不可欠といえます。

会社がキャリア自律を支援することで、キャリア自律した人材が増え、生産性の向上やエンゲージメントの向上、定着率の向上につながり、ひいては組織の活性化や組織力の向上につながります。そして、組織のキャリア自律が進むことで組織の魅力付けにもなり、優秀な人材を採用することにもつながります。さらに人的資本という観点からも、キャリア自律支援は社会の関心も高く、取り組むことは会社の価値向上になりえます。

会社によるキャリア自律支援の方法

最後に、会社によるキャリア自律支援の方法を6つご紹介します。


1.会社としての価値観や方針等を明示・共有する


まず、会社としてキャリア自律した望ましい人物像を明確にする必要があります。そして、会社の価値観や方針等が従業員に浸透することで、会社の目標に沿った個人の目標を立てることができます。さらに、社内の様々な制度について十分周知することも重要です。

これらにより、従業員のキャリアに対する意識向上につながり、社内でキャリア形成をしていきやすくなります。

2.社内人事制度の整備


従業員のキャリアにとって、新しい経験が必要なこともあるため、従業員が希望するキャリアを実現できる機会を設けることも必要です。

既に取り入れられているところも多いかと思いますが、例えば、ジョブローテーション、自己申告制度、社内公募制度、社内FA制度といった制度があります。

こうしたポジションや業務について十分周知され、社内ではこういうことに取り組める、と従業員が認知していることが重要です。

3.キャリアについて考える・相談できる場の提供


個々人については、まずはキャリアについて考える機会が大事になってきます。

具体的には、年齢や勤務年数に応じたキャリア研修の実施やキャリアカウンセリングの導入、社内外の相談窓口の設置等が挙げられます。

4.社内風土の形成


また、会社全体でキャリアに関する関心を高め、自然に話し合える関係性を築くことも重要です。

そのために、上司や同僚とキャリアについて話す機会を設けたり、メンター制度を活用したりすることが挙げられます。

5.社内外の学習機会の提供・推進


社内外での学習を促すことも方法として挙げられます。

社内においては、業務に必要な資格取得や語学スキルの向上など、従業員のニーズに応じた学習機会を提供・援助することや、新たな業務にアサインすることなどが挙げられます。

社外での学習機会としては、副業・兼業やボランティアが挙げられ、新たなスキルや知識を身に着けるだけでなく、人脈を広げることにもつながります。

こういった施策が従業員の選択肢や可能性を広げることにつながります。

6.上司のマネジメント強化


部下のキャリア自律を促す上司の行動として、以下が示されています。

【業務面】

部下を意思決定に参加させること、希望する仕事を割り振ること

【コミュニケーション面】

部下の話をよく聞き、状況をよく見て助言やフィードバックをすること、部下に期待感を伝えること、組織の目標やビジョンを共有すること

【その他】

部下のネットワークを広げるサポートをすること

前提として、上司ー部下間の信頼関係が確立されていることも重要です。


以上、会社によるキャリア自律支援について述べてきましたが、最も重要なのは、キャリア自律支援により、従業員が「この会社でこの仕事をしたい!」と主体的に考え、取り組んでいけることではないでしょうか。

参照

#キャリア自律#セミナーレポート
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