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職場での困りごとには,「原因探し」よりも「どうなったらいいか」を考えましょう!〜解決志向アプローチのご紹介〜

2026/01/08
目次

2025年4月から組織心理研究所に所属しています。山田圭介です。

今回は,チームや組織の困りごとに向き合う際に「相性がいい」心理療法として

解決志向アプローチのご紹介をします。

テーマに入る前に,少し私自身の職場の変化についてお話しさせてください。

3月までは教員として大学で13年ほど働いていました。

各教員に個室の研究室があり,それぞれの研究テーマを持って別々の業務(授業や研究など)をし,

時折会議などで集まることはあるものの,その時間が終わるとまた個人の業務に戻っていくという

サイクルでした。

共同して1つのプロジェクトに取り組むということはほぼありませんでした。

一方,会社は全く違いました。

幾つものプロジェクトチームがあり,それぞれのプロジェクトには様々な人が関わっていることが

当たり前で,「どこまでがその人の仕事か」などがはっきり線引きされないこともありました。

側から見て「こうした方がいいのにな」と考えることがあったとしても,チームに参加してみると

様々な人が関わってきた経緯があって,結果的に現状になっていることもありました。

個人作業をしてうまくいかない場合には,「自分の業務の仕方」に問題があることが多かったので,

それを改めれば良いわけですし,自分1人の作業ですみます。

ですが,チームで仕事をしている場合にはそう単純ではありません。

さまざまな経緯があって現状になっていて,「〜が悪い」という決定的な原因がないことが多く,

今の状況を一新するのは労力に見合わないため,現実的ではないこともあるでしょう。

さらに原因を探している時間があるのならば,「とりあえず現状でどうしていくか」を考える方に

時間を割くことが求められるでしょう。

(ビジネスの現場は本当に時間を大切にする意識が強いです!)

1.「問題の解決」と「原因の解消」は違う!?

まず,解決志向アプローチは原因の解消と解決を違うものと考えています。

解決志向アプローチの考え方の説明として,

故松原秀樹先生(元日本赤十字広島看護大学教授)がおっしゃっていた例を引用します。

山火事が起こっていたとします。

原因が「たばこのポイ捨て」だったとして,火を消すためには原因と関係のない消火剤が必要です。

原因への対処(ポイ捨て防止の呼びかけ)は,再び山火事を起こさないためには大切なことです。

ただそれは,火が消えた後に実施・検討した方がよいことで,

火事が収まっていない最中は当然「どうやったら火が消えるのか」の対策が優先されます。

ビジネスの現場ではどうでしょう?

例えば,商品を誤って多く発注したことに気づいた場合,まずは発注先に急いで連絡しますよね。

そして発注数の訂正が可能なのか問い合わせ,可能であれば謝罪して訂正してもらうでしょう。

訂正が間に合わなければ,予定より多く抱えることとなった商品をどうするのか考えるでしょう。

そして,ある程度の見通しが立ったのちに今回の発注ミスの原因は何か,

次に繰り返さないためにどうするか予防策を考えるというのが自然な流れでしょうか。

困った事態が起こった時には原因の追求よりも解決のための行動が優先されます。

特に,今挙げた発注ミスなどの業務に関わる困りごとに関しては「解決」と「原因」の優先順位が

はっきりと分かれていることが多いのではないでしょうか。

「原因追求」と「事態の解決」混同しやすいケース

今説明したようなケースでは,「解決」と「原因の対処」が混同することはそう多くありません。

お客様や自社への影響,求められる対応速度を考えると自然なことなのかもしれません。

ただこれが,「社員のエンゲージメントが低い」などの組織状態,心理状態の話題になると,

「解決」と「原因の追求」が混同され議論が進まないことがあります。

何とかしようと話し合いの場を設けるも,所属するメンバーがそれぞれが思う問題点を挙げ続け,

文句の言い合いのようになってしまい雰囲気が余計に悪くなってしまった.....などです。

これは極端な例かもしれませんが,解決策や原因がハッキリと見えない困りごとに面した場合,

「原因が何か」をはっきりさせたいと思う傾向が人にはあるようです。

心理学的に言うと,認知的不協和を解消したいという欲求が高まるということです。

しかし,組織状態,エンゲージメントはいろんな要因が重なりあって現状になっています。

原因は本当に特定しづらく,特定できない場合も往々にしてあるわけです。

そんな時ほど「どうなればいいか」という解決を目指す方向に足並みをそろえる必要があります。

原因については各々思うことがあったとしても,組織状態が良くなることについて不平を言う方は

ほとんどいらっしゃらないでしょう。

こうした点からも,チームや組織の問題解決と解決志向アプローチは非常に親和性が高く,

ビジネスにも十分応用できると考えるわけです。

また,解決志向アプローチでは,「解決までの時間は短ければ短いほど良い」と考えます。

1回45分以内のセッションで十分な効果が見られることも多いそうです(Iveson,2002)。

こうした点も,時間を有効に使う意識が強いビジネスとの相性が非常に良いと思われます。

実際に解決志向アプローチはŻak & Pękala(2024)によって幅広い領域でその有効性が示され,

Grant(2012)などのように産業カウンセリングの場面でも効果が確認されています。

2.解決志向の基本的な考え方

それでは,どのように「解決」に導くのでしょうか?

解決志向アプローチの「発想の前提」と「中心哲学」(森・黒沢,2002)を知っておくだけでも,

十分役に立つのではないかと考えます。

少し組織やチームの状態に合うように改変してご紹介します。

まずは,<発想の前提>から

①変化:今この瞬間も変化し続けている。小さな変化が大きな変化を起こす。

 我々の細胞が今この瞬間にも入れ替わっているように,

 見えない小さな変化が常に起こっていて,同じ状態は存在しないと考えます。

 よくない状態にある時にも,常にその状態が続くわけではなく,

 小さな変化を意図的に起こし,最終的な大きな変化を期待します。 

 特に何かを変えた意識はないのに「最初と全然違っている」と感じる時は,

 まさに「見えない変化」が積み重なって見えるようになった例です。

②解決:問題と原因を把握することよりも解決について考える方が役立つ

  先ほどお伝えした通りです。原因把握と解決は全く違うものと考えます。

③リソース:解決のための鍵はそのチームや組織自身が持っている。

 「たまたまうまくいった」または「少し『マシ』な状況だった」のは,

 当事者自身がいつもと違うことをしたから,つまり当事者自身が状況を好転させたと考えます。

 支援の専門家は,「どんな違うことをしていたのか」探すお手伝いを行います。

続いて<中心哲学>です。

今紹介した<発想の前提>に基づいて「実際に行動するときに頭に入れておくルール」です。

ルールなので少し強い言い方がされています。

ルール1:うまくいっているなら,変えようとするな

 全部一新して,気分も新たに!としたいところかもしれませんが,

 うまくいっていることまで変える必要はありません。

 <発想の前提>でもお伝えしたように小さな変化が大きな変化をもたらします。

 うまくいっていることまで変えてしまうと,より困った状況になるかもしれません。

ルール2:一度うまくいったのなら,もう一度それをせよ

 「偶然うまくいった」ときには「必ずいつもと違う行動をしている」と考えます。

 そのことを思い出し,どんな些細なことでもいいので,もう一度それを実行します。

 それで再現できれば,「偶然」が「必然」になります。

  私自身忘れ物が多く,いつも出張や旅行に何かを忘れ,現地で急いで調達していたのですが,

  たまたまスマホのカレンダーに持っていくものを書いて,出発の数時間前に通知が来るように

  しておいたところ,主要な忘れ物はなく,慌てずにすみました。

  それから,忘れてはいけないものはカレンダーに書くようにしています。

  (カレンダーに書くのをそもそも忘れていた場合は,お察しの通りです)

ルール3:うまくいかないなら,(何でもいいから)違うことをせよ

 チームがうまくいかない状況の時には,「パターン」があると考えます。

 アナログ時計の歯車が噛み合って針を動かすように,いろいろな人が関係しながら動いて

 今の状況(パターン)が出来上がっています。1人1人が大きく何かを変える必要はありません。

 チーム内の人々が「歯車」のような関係性だとすると,1人が起こした些細な変化が他の方に

 連鎖して結果的に大きな変化を生む可能性は十分に有り得ます。

3.解決志向の魅力

ここまで色々とご説明いたしましたが,いかがでしょう。

解決志向とビジネスの相性の良さをおわかりいただけましたでしょうか?

非常に簡単にいうと,解決志向アプローチとは「過去にうまくいったことからヒントを得て,

すぐにできることを実施して解決に向かっていく」心理療法です。

様々な特徴を紹介しましたが,私自身はこのアプローチの最大の魅力は

誰のせいにもせずに,解決することができる」ことだと考えています。

それも単なる綺麗事ではなく,本人やチーム・組織が持っている力を最大限に引き出して

解決することができるのです。

生産性の向上が掲げられ,生成AIの登場により仕事の仕方が変わってきている今の社会にこそ,

人間の組織(チーム)にしか,「そのチーム」にしかない可能性と資源を改めて考え,

それを活かしてより良い状態を作っていく必要があるのではないでしょうか?

心理士の道に入り,様々な専門知識を学んでいく中で「まだ自覚していない可能性や資源を見出す

心理療法が存在する」ことを知った時,心が踊ったことを今でも覚えています。

それから17年経った今でも,解決志向アプローチの魅力は全く色褪せることはありません。

引用・参考文献)

Iveson, C. (2002). Solution-focused brief therapy. Advances in Psychiatric Treatment, 8(2), 149–156.

Grant, A., M. (2012). Making positive change: A randomized study of solution-focused coaching and cognitive-behavioral coaching on goal attainment, resilience and workplace well-being. Journal of Systemic Therapies, 31(2), 21–35.

森俊夫・黒沢幸子 (2002). 〈森・黒沢のワークショップで学ぶ〉解決志向ブリーフセラピー ほんの森出版

#臨床心理学#ワーク・エンゲイジメント#動機づけ#マネジメント#心理学Tips
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