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【研究発表】対話型AI面接は「緊張しにくい」のか? 日本教育心理学会第68回総会で発表します

2026/10/08
目次

組織心理研究所は、2026年10月10日から12日にアクトシティ浜松で開催される日本教育心理学会第68回総会において、対人面接と対話型AI面接への応募者反応を比較した研究成果を発表します。

発表題目は「採用選考における対人面接と対話型AI面接の応募者反応(3)―就活自己効力感が『不安低減』と『不透明性・不気味さ』に及ぼす影響―」です。同じ調査データを用いた一連研究の第3報として、AI面接の相対的な緊張しにくさが、どのような学生に表れやすいかを検討しました。

その結果、AI面接は平均的に対人面接より面接不安が低く評価されました。ただし、その差は一様ではありませんでした。就活自己効力感が低く、対人面接で不安を感じやすい学生では差が大きく、自己効力感が高い学生ではほとんど差がみられませんでした。

今回の研究で分かったこと

● AI面接は、平均的には対人面接より面接不安が低く評価された

● AI面接の相対的な不安の低さは、大学講義を通じて募集した群で大きく、就活サービス利用者群ではほぼみられなかった

● 就活自己効力感が低い学生では不安差が大きく、高い学生では二つの面接形式の不安がほぼ同程度だった

面接の不安を、就活自己効力感から捉える

採用面接は、自分の能力や適性を示す場である一方、見知らぬ面接官から評価される場でもあります。そのため、応募者に不安が生じやすい社会的評価場面です。

今回の研究で着目した就活自己効力感は、面接で自己アピールできる、難しいやり取りに対応できる、不安に対処できる、必要な準備を進められるといった、就職活動上の課題を自分が遂行できるという見通しを表します。

対人面接への対処に自信を持ちにくい学生にとっては、人間の面接官から直接評価されないAI面接が、相対的に緊張しにくい場面になる可能性があります。

反対に、自己効力感が高い学生は対人面接でも不安が低いため、面接官がAIに置き換わっても不安が下がる余地は小さいと考えられます。

本研究では、就活状況やAI面接経験の構成が異なる二つの募集群と、就活自己効力感の個人差に注目しました。

調査の概要

大学生・大学院生431名がオンライン調査に回答し、操作チェックで除外された39名を除く392名を分析対象としました。

男性210名、女性177名、回答しない5名です。募集経路は、大学講義を通じて募集した144名と、就活サービス利用者248名でした。

参加者には、次の二つの面接場面をランダムな順序で提示しました。

・対人面接: Web上で人事担当者とリアルタイムに会話する面接。

・対話型AI面接: Web上でAIアバターとリアルタイムに会話し、発話内容をもとに評価される面接。表情解析は行わない設定です。

各場面について、面接不安、評価への納得感、進め方の公平感、組織魅力、不気味さ、不透明性を5件法で尋ねました。

また、面接での自己アピール、難しい相互作用への対応、不安への対処、準備などに関する就活自己効力感を測定しました。

対話型AI面接では、平均的に面接不安が低かった

AI面接は対人面接に比べて、面接不安が平均0.38点低く評価されました。人間の面接官から直接評価される状況がなくなることで、緊張が相対的に弱まる学生がいると考えられます。

一方、評価への納得感、進め方の公平感、組織魅力は対人面接より低く、不気味さと不透明性は高く評価されました。AI面接への反応は、緊張しやすいかどうかだけで決まるわけではなく、選考手続きや企業への評価も含む多面的なものです。

希望する面接形式は、対人面接が78.1%、AI面接が10.7%、どちらでもよいが11.2%でした。

ただし、平均値だけでは、誰に不安低減が生じているのかは分かりません。

就活状況が異なる二群で、不安の差は大きく異なった

大学講義を通じて募集した群と、就活サービス利用者群を分けて比較しました。二つの群は、就職活動の進み具合やAI面接経験の構成が異なります。

講義募集群では、AI面接の面接不安は対人面接より0.95点低くなっていました。

一方、就活サービス利用者群では差が0.04点にとどまり、二つの面接形式の不安はほぼ同程度でした。

AI面接を希望した割合も、講義募集群では20.1%、就活サービス利用者群では5.2%でした。就活サービス利用者群では対人面接の不安も低く、AI面接の相対的な利点が小さくなっていました。

ただし、二群には就活段階だけでなくAI面接経験などの違いも含まれるため、特定の要因だけで説明することはできません。

就活自己効力感が低い学生で、不安の低さが大きく表れた

就活自己効力感を連続変数として分析すると、自己効力感が高いほど、AI面接と対人面接の面接不安の差は小さくなっていました。

就活自己効力感が平均より1標準偏差低い場合と高い場合の推定平均値は、次のとおりです。

就活自己効力感

対人面接

AI面接

AI-対人の差

低い場合(-1SD)

3.94

3.27

-0.67

高い場合(+1SD)

2.68

2.60

-0.08

注:面接不安は1~5の5件法。数値は回帰モデルから算出した推定平均値です。差はAI面接-対人面接で、負の値ほどAI面接の不安が低いことを示します。

就活自己効力感が低い場合、対人面接の不安は3.94、AI面接は3.27で、AI面接の方が0.67点低くなっていました。

自己効力感が高い場合は、対人面接2.68、AI面接2.60で、差は0.08点でした。

自己効力感が高い学生は、そもそも対人面接の不安が低いため、AI面接へ置き換わることによる相対的な利得が小さくなります。AI面接の「緊張しにくさ」は、対人面接で不安を感じやすい学生に、より表れやすいと考えられます。

面接不安以外の反応も、自己効力感によって異なった

就活自己効力感が高いほど、不安の差が小さくなる一方、組織魅力、不気味さ、不透明性では、AI面接と対人面接の差が相対的に大きくなっていました。

面接への自信が高い学生にとっては、AI面接の利点が不安低減として現れにくいだけでなく、対人面接との違いが別の評価側面で目立つ可能性があります。したがって、AI面接への反応を面接不安だけで評価すると、応募者体験の一部を見落とします。

今回の結果は、AI面接がすべての学生にとって同じ役割を持つわけではないことを示しています。

対人面接への不安が強く、自分の力を発揮できるという見通しを持ちにくい学生にとっては、AI面接が心理的な負担を相対的に抑えやすい選択肢となる可能性があります。一方、就活自己効力感の高い学生では、不安低減は小さくなっていました。

本研究の留意点

本研究は、実際の採用面接を受けた後の反応ではなく、面接場面を想定したシナリオへの反応を扱っています。また、AIアバターとリアルタイムに会話し、発話内容をもとに評価され、表情解析は行わないと説明された形式を対象としています。録画面接やテキスト面接など、他のAI面接に同じ結果が当てはまるとは限りません。

募集経路による比較では、就職活動の段階、AI面接経験、参加者の属性など複数の違いが重なっています。また、就活自己効力感との関連は観察データにもとづくものであり、自己効力感を高めれば反応が変化するといった因果関係を示したものではありません。

今後は、実際にAI面接を受けた人を対象とする調査や、面接準備を追跡する縦断研究が必要です。

一連研究の記事

第1報 AI面接は「緊張しにくい」だけでは選ばれない

第2報 AI面接に、応募者はどのような説明と運用を求めるのか

発表情報

大会名
日本教育心理学会第68回総会

会期
2026年10月10日(土)~12日(月・祝)

発表番号
PF33

発表題目
採用選考における対人面接と対話型AI面接の応募者反応(3)
―就活自己効力感が「不安低減」と「不透明性・不気味さ」に及ぼす影響―

発表者
丹野 宏昭 主任研究員

日時・会場
2026年10月11日(日)15時30分~17時30分/コングレスセンター 3階 31会議室

発表形式
ポスター発表

大会ウェブサイト
https://www.edupsych.jp/2026-annual-meeting

注:発表論文集提出後に分析モデルを一部精緻化し、本記事では発表ポスターに掲載した分析結果を紹介しています。

#プレスリリース#AI#社会心理学#採用面接#就職活動
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